DANSEN FASHION 哲学 No.27 澁澤龍彦:わが夢想のお洒落(2)

DANSEN FASHION 哲学 No.27 澁澤龍彦:わが夢想のお洒落・・・男子專科(1972年5月号)より

DANSEN FASHION 哲学 No.27 澁澤龍彦:わが夢想のお洒落・・・男子專科(1972年5月号)より

それは一種の風流、あるいは風狂にも通じる

鎌倉末期から室町・さらに安土桃山にかけての戦国乱憶の時代は、ある意味で日本のルネッサンスと言ってもよいほど、わが国の歴史のなかで最もおもしろい時代の一つだと思われるが、この頃に流行した風俗に「ばさら」というのがあった。

『建武式目条々』に、「近日婆佐羅と号し、もっぱら過差を好み、綾羅錦繍、精好銀剣、風流服飾、目を驚かさざるなし。すごぶる物狂いというべきか」とあるように、「ばさら」という言葉は、まず第一に、服装やアクセサリーに贅沢を凝らすことの意味に用いられていたらしいが、そればかりではなかったようだ。それは一種の風流、あるいは風狂にも通じる、伝統破壊にもとづいた精神の自由とダンディズムをも意味していたのである。

・・・次回更新に続く