日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ショーツ

海外でまったく通用しないファッション用語:ショーツ

ショーツ
shorts

正しくは
【パンティーズ】
panties(米)
【ニッカーズ】
knickers(英)

女性下着のショーツ。つまり、パンティー類のことで、「短いもの」という原意からきた。古くはズロースとか日本語で「下穿き」などと呼ばれたもの。また子供用や男の下着としてのそれをパンツということもあるが、これらはすべて日本的な用法である。ショーツにはまた「半ズボン・短パン」の意味もあるが、これはショート・パンツを略したもので、これは英米でも同じ意味で用いられる。ただし英語のショーツには、男子用の下着のパンツをいうこともある。

日本で女性の下着について、ショーツと呼ぶようになったのは、遠い昔の話ではない。ショーツといういい方が一般化したのは、おそらくここ20年くらいのことで、それまではパンティーということのほうが、多かったのだ。それは古い服飾用語辞典などを見ているとよくわかることで、1970年代に発行された辞典類を調べても、〈ショーツにはブリーフあるいはドロワーズなどの短い下着類の意味もある〉などと、申し訳なさそうに紹介されているくらいのことなのだ。それが一気に市民権を得たのは、パンティーという直接的な表現をきらった現代女性たちの、感性の高さがなせるわざであったのだろう、と私は思う。アメリカではショーツはパンティーのままである。より正確には複数形でパンティーズといわなければならないが、パンティーはパンティーなのだ。面白いのは、イギリスでの呼称で、この国ではショーツのことをニッカーズというのである。古くは「ブルーマー式の婦人用下穿き」をいうらしいが、いまでもショーツはニッカーズで通る。パンツといういい方もあるが、これの原意は「男子用のズボン下」。ところ変われば名が変わる、の好例であろう。