DANSEN FASHION 哲学 No.158 阿刀田高：無理をしてまで本気にならない・・・男子專科（1984年12月号）より
〈プロフィール〉あとうだ・たかし 1935年東京生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業後、国会図書館に勤務。こうした環境の中で蓄積された幅広い知識をもとに、勤務のかたわら短篇作品を書き続け、その後文筆業に専念、この間に発表した『ブラック・ユーモア入門』はベストセラーに。昭和53年『来訪者』で推理作家協会賞受賞。翌年『ナポレオン狂』で上期直木賞受賞。ショートショート・ストーリーの名手として活躍中・・・男子專科（1984年12月号）より
和服こそ、ゆとりのおしゃれ者（1）
私の場合、おしゃれ着の要素がいちばん強いのは和服だ。もの書きの中では、私はよく和服を着るほうだと思う。夏、冬、あいものと20着くらいあるだろか。
和服の良さは、まず自分の体型に合っていること。洋服はスタイルの良い若者や外人には完全に負けるが、キモノならなんとか勝負できる。とりわけここ3～4年は腹の出ぐあいからして体型も着物のにますますふさわしいものになってきた。
それに、みんなが流行の新しいものにとびついていくなかで、日本古来の美を少し見直してもいいんじゃないか、なんていうデモンストレーションの意味合いも多少はある。
また、和服を着ているときの気持ち良さ、これもいい。和服は、姿勢が悪いと着くずれしてしまうから、どうしても背すじをシャンと伸ばすようになる。姿勢はよくなるし、だらしなくできない。こんな心地良い緊張感も和服ならではのものだろう。
・・・次回更新に続く
