DANSEN FASHION 哲学 No.158 阿刀田高:無理をしてまで本気にならない・・・男子專科(1984年12月号)より

DANSEN FASHION 哲学 No.158 阿刀田高:無理をしてまで本気にならない・・・男子專科(1984年12月号)より

〈プロフィール〉あとうだ・たかし 1935年東京生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業後、国会図書館に勤務。こうした環境の中で蓄積された幅広い知識をもとに、勤務のかたわら短篇作品を書き続け、その後文筆業に専念、この間に発表した『ブラック・ユーモア入門』はベストセラーに。昭和53年『来訪者』で推理作家協会賞受賞。翌年『ナポレオン狂』で上期直木賞受賞。ショートショート・ストーリーの名手として活躍中・・・男子專科(1984年12月号)より

単純明解を好めばシャツも無地(2)

外出するとき困ることのひとつに荷物がある。本や資料などの入れ場所だ。私は、出かけるときはなるべく持ち物を少なく、と思っている。できれば手ぶらがいちばんなのだがそうもいかないときがある。そんなときは、ちょっとした大きさのものなら、私はどんどん郵送することにしている。

たとえば資料のいる会合などあれば、自宅の住所と宛名を書き、きちんと切手を貼った紙封筒にその資料を入れて出かける。会合が終われば、その資料を紙封筒にもどし、ちゃんと封をしてポストに投函すれば、もう手ぶらとなる。余分なものをもたずに夜の街に行けるわけだ。そして速達ならば翌日には、その資料も手元に届く。

旅に出たときも、みやげ物や土地の人にいただいたものなど、どんどん、その都度送るようにしている。荷物がつぎつぎと増えてくると、せっかくの旅の身軽さが台無しになってしまう。そこで、旅に出るときは、ヒモやハサミなどの小包み用の作業道具一式は欠かせないものとなる。

ゴテゴテと荷物をたくさん持ちたくない、いつも身軽でいたいーーーこれは実用的な面と同時に、私なりのひとつのおしゃれでもある。

・・・次回更新に続く