70年代の出来事、流行、カルチャーがまるごと一冊〈とまどい・セブンティーズ〉

70年代の出来事、流行、カルチャーがまるごと一冊〈とまどい・セブンティーズ〉

1971 地球の日から:〈とまどい・セブンティーズ〉より

70年代の出来事、流行、カルチャーがまるごと一冊〈とまどい・セブンティーズ〉

駅におりたときから感じていたのだが、きょうの新宿はたしかにどこかちがっていた。

東口から伊勢丹のほうに向かって、若ものたちの群れが続く。連中のほとんどは、肩まで伸びたロングヘアにジーンズのスタイル。広い新宿通りもきょうは歩行者天国* として解放されている。

伊勢丹のあたりから、なにやらロックのサウンドが聴こえてくる。あのドラムの響きからすると、ナマかもしれないゾ。

丸井の前を過ぎ、紀伊国屋のあたりまでくると、もうかなり歩きづらくなる。それでもかまわずに人を押しのけ、人波をすり抜けて、少しでもロック・サウンドの源に近づいていった。

伊勢丹の横のところが広場になっており、そこに鉄パイプを組んでつくったステージが見える。そこの一段高くなったところに、4、5人の若ものが陣取って、強烈なロックの音を発していた。

急ごしらえのステージの中央に、なにか大きな文字を書きつけた紙が貼ってある。人垣を分けてさらに前に進み、しかとその文字を自分の視界に入れた。「質・素・革・命」*。シッソカクメイって、いったい、なんなんだ?

さらによく見ると「地球の日」と書かれた看板も見える。うん? 地球の日? 質素革命? こりゃあ、なんだか面白そうなイベントだぞ。

そうすると、インディゴブルーとアースブラウンとオフホワイトの3色で染め分けられたあの旗は、「地球の旗」ということになる。

そういえば、ステージの上やそのまわりには、そうした地球色の服を着た若ものたちが勝手に歩き回っている。金巾* を地球色でムラ染めにしたそれらの服は、見なれたジーンズとはちがって、ひと味ちがったジーンズ・ファッションの魅力を見せつけている。なによりも彼ら彼女たちの生き生きとした表情がいい。連中の動きを見ているだけで、なんだかこっちまでウキウキしてきた。

やがて彼らのなかからリーダーとおぼしき男が立ち上がって、アジテーションをはじめだした。180センチを越える長身に、多血質のイカツイ顔。ブルーのムラ染めのシャツ・ジャケットに、同じ色調のベルボトム・パンツ* をはいている。

年のころは30歳くらいと、連中のなかではいちばんトシを喰っているようだけれど、そんなオジンくささはみじんも感じさせない。独特の関西なまりの口調が、親しみやすい雰囲気をつくりあげるのに役立っている。

あっ、あのヒト見たことある。ほらファッション・プロデューサーの浜野安宏、アンコーさんだ。

・・・以上、〈とまどい・セブンティーズ〉1971 地球の日から より

続きは『とまどい・セブンティーズ』DANSENノベルスデジタル