日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

カバーオール

海外でまったく通用しないファッション用語:カバーオール

カバーオール
coverall

正しくは
【シャツ・ジャケット】
shirt jacket

シャツ・ジャケット型の簡便な上着をいう俗称。シャツ・カラーやバル・カラーなど、背広襟以外の襟型を特徴とし、袖口は背広のように切り放しとしたデザインのものが多く見られる。カバーオールといえば、従来は上下がつながったジャンプ・スーツ型の仕事着の一種をいうが、最近では遊びにも仕事用にも着ることのできる機能的で軽快な男のジャケットを、このように総称する傾向が生まれている。

若いころファッションに狂ったことのある、およそ50歳前後以上の男たちは一様にとまどいを覚えることだろう。私もそのひとりであった。10年ほど前のこと、あるメンズウェア売り場で「このカバーオールなんていかがでしょう」と、黒いジャケットをすすめられて、耳を疑ったのである。それは黒のサージで作ったシャツ・カラー、5つボタンの上っ張り状のイージーな作りのジャケットで「これはシャツ・ジャケットじゃないか!、カバーオールとはちがうぞ」と、叫び出すところであった。ところがよく調べてみると、どうも若い人たちの間では、この種の簡便なジャケットを、このころからカバーオールと呼ぶようになっていたのだ。気になって仕方なかったので、さらに調べてゆくと、英語のカバーオールには「上っ張り」という意味もあり、複数形のSがついてカバーオールズになると、「つなぎ型」の服の意味になることもわかってきた。だから、海外でもカバーオールで通用するかもしれないが、よくわからせるためにはシャツ・スタイルのジャケットということで、シャツ・ジャケットといったほうが、話が早いかもしれない。