ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。

前身頃の打ち合わせが男女で違うのはなぜ?

服装スタイルの「謎・不思議」: 前身頃の打ち合わせが男女で違うのはなぜ?

現在、男の洋服の打ち合わせは左側の前身頃が右前身頃の上にかぶさる形が大半で、これを「右前」とか「男前」などと呼んでいる。対して女性のそれは右身頃が上前となる「左前」が常識となっている。これには色々な説があるが、中世の西洋で男は剣を左腰に吊ったところから、それを抜きやすいように「右前」に変化していったという。女性は「左前」のままで、それは赤ちゃんを左手に抱いてお乳を与えるのに都合がよかったからなどといわれている。また昔の上流階級の女性は自分で服を着る習慣はなく、すべて女官に着させていたので、着せやすいようにこの形が定着したという話もある。これはまた性差別の強かった時代の名残りで、右側は「正しい」→男性、左側は「端」→女性という発想から、このような区別が生まれたものともいわれる。いずれにしても、これは西欧文化の伝統というもので、いつ誰が始めたかという問題ではない。なお日本のキモノはすべて「右前合わせ」とされており、「左前」は死に装束となるのでご注意を・・・・・・。