日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。
チノ・パンツ
チノ・パンツ(チノパン)
chino pants
正しくは
【チーノーズ(チノーズ)】
chinos
チノ・クロスまた単にチノと呼ばれる厚手繊維綿布で作られたパンツ。日本ではチノ・パンツ、またこれを短縮してチノパンともいうが、正しくはチノーズで、さらに原音に忠実にはチーノーズという。したがってチノ・パンツも正しくはチーノ・パンツとなる。チノは中国の古い呼び名であるシナChinaからきたもので、第1次世界大戦中、フィリピンに駐留していたアメリカ陸軍が、衣料用などに中国から調達した生地に由来するといわれる。
いまやジーンズと並んで、カジュアル・パンツの雄となった観のあるチノーズだが、もともとは軍隊で使われていたユニフォームとしてのパンツだった。それが第2次世界大戦後、一般に出回るようになり、1950年代にはアメリカの学生たちの間でファッションとなり、今日の基盤を作った。日本に入ってくるのは、1960年代のことだが、本格的なものは導入されず、当時の若者たちは似たようなパンツでごまかした。これらをコットン・パンツと総称したり、これを略してコッパンとか綿パンなどといったのもなつかしい。日本にチノパンの名称が定着するのは1970年代後半になってからのこと。アウトドア・ブームやフライデー・カジュアルの流行の影響もあって、最近ようやくチノーズという本式の名称で語られるようになってきたが、まだまだチノパンという呼び方のほうが根強い。と思っていたら、本国のアメリカではチーノーズに代わってカーキ・パンツといういい方が台頭してきた。これはなんでもチノというのに差別的な意味があるということで、大手のカジュアル・ショップ・チェーンが提唱しているもっとも今的なチノパンの呼び名なのである。