男子專科 1986年2月号 NO.263:ビスコス・マッチングで冬と夏が同時進行形

男子專科 1986年2月号 NO.263 より

ビスコス・マッチングで冬と夏が同時進行形-1

春にはまだ早いが、ま、気をとりなおして春風でふぁーと、流れるようなソフト・シルエットを想像してほしい。これくらいの想像力もないようでは、おしゃれはたのしめません。ひとつ大きく息を吸って、イメージの翼をゆっくりとひろげてみる・・・・・・

そうすると、少しずつひとつのシルエットが浮かび上がってくるはずだ。そして気付くだろう。街路樹や太陽の光などにも、春の輝きが見られるように、このシルエットにも美しいツヤのあることを。

さらに、そこに描かれた柄を見きわめてみる。クラシックなペーズリー、フローラル、また絵筆をのびのびと走らせたように大胆なプリント柄が発見できただろうか。まさに春のニュー・ファッションではありませんか。

そんなファッションで注目すべきポイントは素材である。

素材をテーマに、おしゃれアドバイスをするのは、私にとっても久し振り、それだけに力もはいるが、それだけのことはあるおしゃれと言っていい。私はそれを「ビスコス・マッチング」とネーミングした。

おしゃれプロの諸君には、絶対のおすすめ品である。

ビスコスとは、絹のような合成繊維で、軽く、ソフトで、しかもツヤがある。その他にも、レイヨンの軽やかさなども、大いに注目しておきたい。ソフトなドレープが、たいへんに美しいのだ。

話は少し脇道にそれるが、昔はおしゃれな人なら老若男女を問わず、”ドレープ”という言葉を知っていたし、よく使ったように思うのだが、いかがだろうか。

たとえば、ジャケットで大事なのは、胸のドレープで、ソフトにふくらんだそのボリューム感の上品さみたいなものに、男は憧れたものである。ここで注意したいのは、ドレープとは、単に生地をたっぷり使うこととは違うのですね。ドレープというのは、とぎすまされた完壁なシルエットで、この厳しさが、最近この言葉自体がヒマになってしまった原因かもしれない。

というわけで、話は尽きないビスコス・マッチングであるが、そのウエルドレスのためのアドバイスを、いくつかあげておくことにしよう。

・・・次回更新に続く