服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

戦後最初の一大ブームとなったギャバジン製の服

年代別『流行ファッション』物語:戦後最初の一大ブームとなったギャバジン製の服

1950年代:「ギャバジン・ルック」1950

1950(昭和25)年6月、朝鮮戦争が勃発し日本ではこれに関連して「特需景気」が起こる。日本経済の本格的な復興が始まったのだ。繊維業界には「糸へん景気」が起き、「ガチャ万コラ千」という流行語が生まれる。「ガチャッ」と一織りすると1万円の闇利益が生まれ、「コラッ」と取締りに遭うと千円渡してこれを見逃してもらうことから生まれた言葉。このころ男のファッションの世界でギャバジンが大流行し、戦後最初の一大ブームとなった。それまでのギャバジンはコートや作業着などの素材だったものが、スーツやパンツなどにも用いられるようになり、男たちはこぞってギャバジン製の服を着始めた。これも元はといえばアメリカからきた流行で、リーゼントやアロハシャツなど「アプレ族」の流行と軌を一にするものだが、明るい色調と金属的な光沢感がいかにも開放的なアメリカ調のファッションとして幅広く受け入れられたのである。