服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

現在のイージー・ウエアリングのルーツとなった

年代別『流行ファッション』物語:現在のイージー・ウエアリングのルーツとなった

「デコントラクテ」1977

70年代前半のファッション・キーワードが「インベストメント・クロージング」だとすれば、70年代後半のそれは「デコントラクテ」ということになるだろう。フランス語で「束縛されない」といった意味を持つこの言葉は、1977(昭和52)年ごろ初めて登場し、現在のイージー・ウエアリングのルーツとなった。考えてみれば70年代以降のファッションは、すべてが「着やすさ」を追求する方向で流れてきたのではないだろうか。何者にも束縛されず、気軽に着ることができる服。そうした着心地のよいファッションを求める気分が年々高まっていったのだ。こうした考え方で作られたアンコン・ジャケット(無構造服)などは70年代の初めにすでに現われていたが、その気分を決定づけたのが、この「デコントラクテ」という言葉だったのである。これはその後スラウチー(だらしない)と同義とされるようにもなったが、2004年春、デコンストラクトという英語で再び登場している。