男と女の服飾ファッション変遷史:1960年代

男と女の服飾ファッション変遷史:1960年代

1960年代は当初ゴールデン・シクスティーズと呼ばれたように、高度経済成長の道をひた走った。ファッションも戦後ベビーブーマーたちが成人に達するに及んで、爆発的な成長を見る。世にいうファッション・エクスプロージョンの時代である。それを代表するのが、アイビー、ミニスカート、ジーンズの大流行。これを先年亡くなったファッション評論家の先駆け、林邦雄氏は「戦後日本のファッション革命三大因子」と名づけたものだった。世界のファッションはオートクチュールからプレタポルテへと大きく揺れ動き、それは注文服から既製服の時代への変化を如実に示していた。それはまたファッションの基準がドレスアップからドレスダウンへ、つまり、フォーマルからカジュアルへと大きく変わったこともあらわしていたのである。とりわけアイビー・ルックの日本上陸は、ボクたちにとってのはじめてのファッションとして強く印象に残っている。これを紹介し普及させた最大の功労者が、当時のVANヂャケットの社長であった石津謙介氏で、氏は多くの和製ファッション用語を創り出したことでも知られる。ホンコンシャツをはじめとして、トレーナーやスタジアム・ジャンパー、スゥイングトップ、アイビー・キャップなど、いまでも通じる多くの名用語を残している。こうしたVAN製のファッション用語の氾濫と定着が、60年代の日本のファッション用語の一大特徴であったといっていいだろう。60年代の後半は、まさに若者たちによるカウンター・カルチャー(反体制文化) の時代。女性たちのスカート丈は見る見るうちに短くなり、シースルーにノーブラと性の解放が進んでゆく。男たちの髪は反対に際限なく長くなり、Tシャツとジーンズが制服と化してゆく。とにもかくにも60年代は、ヤング・ファッションの革命期だったのだ。

ファッション蘊蓄事典(2004年(平成16年)9月発行)デジタルより