日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ランニング・シャツ

海外でまったく通用しないファッション用語:ランニング・シャツ

ランニング・シャツ
running shirt

正しくは
【アスレティック・シャツ】
athletic shirt

男性用の代表的な下着のひとつ。徒競走の選手たちが用いるシャツということから、ランニング・シャツの名が付いたもので、単にランニングともいうが、これらはすべて和製英語である。アメリカではこの種の下着をアスレティック・シャツといい、頭文字からAシャツ(エー・シャツ)とも呼んでいる。アスレティックは「運動競技の」という意味で、これがもともとはスポーツ用の衣服として作られたことがわかるだろう。

ランニング・シャツの元になったスポーツウエアとしてのシャツは、1890年ころ登場し、1930年代に量産化されたとモノの本にある。それが、あるものは陸上競技などのアスレティック・ウエアに発展し、あるも のは男の夏の下着シャツとなり、そしてあるものはタンクトップと同義に扱われるようになった。アメリカでアスレティック・シャツと呼ばれるのは、それがもともと運動着であったからにほかならないのだが、イギリスでの呼び方は、これとは大きく異なる。イギリスでは日本のランニング・シャツのことを、なんとベスト vestというのである。日本やアメリカでベストといえば、それはまちがいなく「チョッキ」のこと。ところが、イギリスではチョッキはウエストコート waistcoatといい、ベストはランニング・シャツを意味するのだ。なおイギリス英語のベストには「女性肌着」の意味もあるという。ランニング・シャツの肩の部分をストラップ・ショルダー(帯状の肩)というが、クラシックなタイプでは、この部分がイギリス型では広く、アメリカ型では狭く作られているという。こんなところにも英米のちがいが発見できて、実に興味深いものがある。