男子專科 2014 AUTUMN vol.2

男子專科 2014 AUTUMN vol.2

ヘンリー・プールの活躍

男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

ナポレオン戦争の勝利と産業革命によって、英国の優位性は、メンズファッションにおいても一時代を築きあげようとしていた。

19世紀のロンドンは「職人のアテネ」と呼ばれた。技芸の神アテネがロンドンに降臨したかのように、仕立て技術が向上したのである。解剖学的な見地による体型の理解。それを幾何学的手法によって採寸し、設計図に起こす。またアイロンの採用で立体的な服作りが可能になった。

こうした新しい技術を学んだヘッドカッターのひとりにヘンリー・プールがいた。彼は父親の援助
を受けてバーリントン・ストリートに店を構えたが、変わった方法で商売を広げた。それはスポーツキットと呼ばれる乗馬衣装一式をタッターソールヤードへ持ちこんだのである。

この当時富裕層や貴族たちは上流の嗜みとしてハンティングを好んだ。その狩猟に欠かせない上質な馬の取引がタッターソールヤードでは行われていた。プールはそこで、著名なクロスカントリーライダーとして知られるジェム・メイソンと懇意になる。彼の紹介によって、プールの店には独身で羽振りの良い乗馬好きの顧客が訪れるようになる。

1846年プールは会計事務所のあったサヴィル・ロウに店を移す。なんと好都合なことにそ
こは、かってヘンリエッタが居住し、今はサヴィルクラブ(オスカー・ワイルドなどが出入りする名門クラブ)になっていたから、ますますプールには紹介による上顧客が増えたのである。

・・・次回更新に続く