日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

サスペンダー

海外でまったく通用しないファッション用語:サスペンダー

サスペンダー
suspender

正しくは
【サスペンダーズ】
suspenders(米)
【ブレイシーズ】
braces(英)

吊りバンドのことで、とくに「ズボン吊り」をさす。ズボンがずり落ちないように肩から吊り下げる一対の帯ということができるが、サスペンダーというのは実はアメリカ英語で、イギリスではブレイシーズというのが正しい。もっと古くにはギャロウジーズ gallowsesという言葉もあったが、これはもう使われなくなっている。なお、イギリスでサスペンダー(正しくは複数形でサスペンダーズ)というと、ガーター・ベルト(靴下吊り)の意味になる。

同じものでも、アメリカとイギリスでは著しく呼び方が異なる言葉というのがいくつかある。アメリカのパンティーに対して、イギリスのニッカーズというのが代表的なそれだが、このサスペンダーも英米両国で極端に異なる好例だ。アメリカのサスペンダーズは、イギリスではブレイシーズ(ブレイセスとも)。そしてイギリスでのサスペンダーズというのはガーター・ベルトをあらわし、それをアメリカではガーターズ gartersという。ついでながらフランス語でサスペンダーはブルテル bretellesといい、古語となってしまったギャロウジーズのギャロウズには、「絞首台・絞首刑」という物騒な意味がある。ところで「ズボンはサスペンダーで吊ってはくのが、いちばん美しい」という言葉があるのをご存じか。ズボンというものは、腰で留めるのではなく、肩で支えてこそもっとも美しいシルエットが表現されるものなのである。だから着装の美しさが求められるフォーマル・ウエアにおいては、必ずサスペンダーを使用するようになっているのだ。第一、ちゃんとした礼服のズボンには、最初からベルト・ループなんぞという野暮なものは、付いていないのである。