男子專科 2014 AUTUMN vol.2

男子專科 2014 AUTUMN vol.2

ダンディのニュータイプ化が始まる

男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

第2次世界大戦後は、それまでメンズファッションを牽引していた英国のプリンスパワーが一時的に衰え、代わりに映画や音楽界のスターたちの着こなしがメディアに乗って世界へ配信されることになった。いわばダンディの大衆化の始まりである。

サヴィル・ロウにも、スウィンギン・シックスティーズの流行によってトミー・ナッターが出現。多くの伝説的なロックスターを新たな顧客リストに加えることになる。その詳細は後のページで紹介することにして、話を現代のサヴィル・ロウへ戻すことにしよう。

約20年前に訪れたサヴィル・ロウは世界的なリセッションの影響もあって、一部の老舗を除いて閑散としていたものだ。それが今はどうだろう。とくにロンドンオリンピック以降はがらりと様相が一変した。

ほとんどの店が通り側に大きなショウウインドーを設け、入り口近くにある接客スペースは明るく解放感にあふれている。以前はどの店も、目立たない小さな看板を入り口の簡素なドア付近に設け、紹介の人間以外は入室お断り、というあたかもメンズクラブのような閉鎖的な匂いを漂わせていたものだが、雲泥の差だ。

我々が訪れた6月中旬のロンドンは、アスコット競馬とウインブルドンテニス大会が開催される1年で一番良い季節。それをめざして世界中の金持ちがやってきたから、4000ポンドのビスポークスーツがパンケーキのようにバンバン売れていくのを目にしたものだ。

最近評判の高いロンドン ファッション ウイークでは、サヴィル・ロウのノウハウを取り入れたブランドが登場しているし、ビスポーク商売とは別に、カジュアルショップを始めた老舗テーラーもある。はたしてサヴィル・ロウは、1990年代のプラダやグッチのようにブランド再編をして、ラグジュアリー市場へ参入するのか、と勘ぐりたくなる勢いである。

男のプレイグランドとして君臨したロンドン。その紳士服の聖地として約200年もの歴史をもつサヴィル・ロウはいったいどこまで変身を続け、さらにいかなる新種のダンディを輩出するのかは、大変に興味深い課題といえよう。

なぜなら男子専科はジェントルマンを礎として常にダンディにスポットを当ててきた日本最古のメンズファッション雑誌だったからだ。一見解放感にあふれるサヴィル・ロウの扉をあけ、その奥に潜むダンディズムの奥義を見極めること。それは男専の創刊以来続く使命なのである。

・・・了