年代別『流行ファッション』物語:「レトロ・ファッション」1973

『華麗なるギャツビー』でエレガントなスタイルが台頭

ファッションにクラシック回帰の傾向が見えてきたのは1973年ころからのこと。ジーンズ・ルック全盛の中で、それとはまったく性格を異とするエレガントなスタイルが台頭してきたのだ。男たちはそれまで見向きもしなかったクラシカルなスリーピーススーツやダブルブレステットのスーツに興味を示し、女性たちは1930年代調のロングスカートを好んではき始めた。これをレトロスペクティブ(回顧の、懐旧の)を略して「レトロ・ファッション」と呼ぶようになった。こうした動きは実は1968年ころ、映画『俺たちに明日はない』から生まれた″サーティーズ・ルック(1930年代ルック)″によって示されてはいたのだが、本格的になるにはこのころまで待たなければいけなかったのだ。そして、これもまた映画の影響が大きいことを指摘しておかなければならない。72年の『ゴッドファーザー』『バラキ』、そしてレトロ・モードを決定づけたのが74年の『華麗なるギャツビー』であった。

ファッション蘊蓄事典(2004年(平成16年)9月発行)デジタルより