一着のレインコートをめぐる小説風断片(4)

DANSEN FASHION 哲学 No.111 村上春樹:一着のレインコートをめぐる小説風断片・・・男子專科(1981年1月号)より

DANSEN FASHION 哲学 No.111 村上春樹:一着のレインコートをめぐる小説風断片・・・男子專科(1981年1月号)より

しかしそのコートはぴったりと彼の体に馴染みそうに見えた。別な見方をすれば、そのコートは彼そのものだと言うこともできる。歳月かゆっくりと彼を擦り減らせてきたようだった。歳は28から33。そのうちのどれを言われても、殊に反対する理由もない。あなたは目をつぶってカードを引く・・・・・・31、それが彼の歳だ。まるで何かの記念品のようにアドレセンスの影を引きずりつづけ、ある日それがプツンと切れてしまったことに気づく。そんな歳だ。

・・・次回更新に続く