DANSEN FASHION 哲学 No.27 澁澤龍彦:わが夢想のお洒落(4)
時代はやや下るが、織田信長が若い頃、異様な服装をしたり奇矯な言動に及んだりして人目を驚かしたのも「ばさら」趣味として考えられるかもしれない。比叡山や興福寺を焼き払った残忍無類な破壊主義者の信長には、その反面、キリシタン・バテレンを保護して南蛮趣味を喜んだりする、新らしいもの好きなハイカラなところがあった。安上城の壮麗な大城郭を建設したのも、初めて戦闘に鉄砲を用いたのも信艮である。
「ダンディズムはとくに、民主制がまだ全能となるまでには至らず、貴族制の動揺と失墜もまだ部分的でしかないような、過渡期にあらわれる」とボードレールが書いているが、私には、この日本独特の「ばさら」なるものも、やはり動乱の過渡期にあらわれたダンディズムの一種ではあるまいか、という気がしてならない。
・・・次回更新に続く