「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
日本の「族」ファッションのルーツは「モボ・モガ」にあった
同じような服装に身を固めて街をのし歩く若者集団。これを俗に「族ファッション」などと呼び、戦後の「マンボ族」や「太陽族」から「竹の子族」「渋カジ族」までさまざまな「族ファッション」が登場したものだが、実は戦前にも若者たちによるそうした動きはあった。それが「モボ・モガ」と呼ばれる青年男女たち。モボは「モダンボーイ」を短縮させた表現で、モガは「モダンガール」からきたもの。モボ、モガたちは関東大震災(1923)後の大正モダンと呼ばれた時代に現われ、昭和の初期にかけて最新のモードに身を包んで東京・銀座の街角を流して歩いたものだった。モダンガールという表現が初めて使われたのは1924(大正13)年のことで、それは当時最もモダンといわれた女性雑誌『女性』8月号掲載の「モダーン・ガールの表現」という北澤秀一の論文によるという。対してモダンボーイという表現は同誌1926(大正15)年11月号の「モダンボーイズは女性の敵か味方か」という記事中に登場したのが最初とされている。