「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
アメリカ版ツイッギーはウォーホルが愛したイーディ
イーディ・セジウィックという女性をご存じだろうか? 憶えていたら「60年代の蘊蓄王」になれること間違いない。1980年代の初めにアメリカのデザイナー、ベッツィ・ジョンソンが彼女をイメージモデルとしたミニスカートやミニドレスを多数発表し、そこから「イーディ・ミニ」という流行語も生まれている。イーディ・セジウィックは1943年ボストンの名門の家系に生まれ、ファッションモデルとなって1965年の「ガール・オブ・ジ・イヤー」に選ばれるなど華々しい活躍をするが、彼女を彼女たらしめたのは私生活におけるアーティストたちとの交友関係にあった。時のポップアートのスター、アンディ・ウォーホルにとってイーディは「憧れの君」であり、フォークの旗手ボブ・ディランは彼女のことを何度も歌っている。つまり、イーディはアメリカの60年代を象徴する最大のアイドルだったのだ。そして1971年、ドラッグ中毒に陥った彼女は28歳の若さで急逝した。それはあまりにも60年代的な死だった。