日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

サ ボ

海外でまったく通用しないファッション用語:サ ボ

サ ボ
sabot(仏)

正しくは
【クロッグ】
clog

木をくり抜いてつくられた木靴の総称。オランダの木靴クロンペン klompenなどを元にして生まれたもので、現在では厚いコルクや木の底で、カカトのないつっかけ型のものや革などの帯をあしらったサンダル型のものなどがある。ひじょうに古い形の履きもので、元はオーバー・シューズの意味もあったが、いまではカジュアルな履きもののひとつとして人気がある。ただし、これはフランス語で、英米ではクロッグといわないと通じない。

日本でサボという名の妙な履きものが流行したのは、いつのことだろう。私が覚えているのは、たしか1970年代のはじめごろで、ちょうどヒッピー・ムーブメントに浮かれた若者たちが、男女の別なくこれを履いていたようだ。すなわち、ロングヘアにヒゲ、女のコだったらウルフカットにトンボメガネ、そしてピタピタのミニTシャツに思い切り裾の広がったベルボトム・ジーンズ、というヒッピー・スタイルに、底が5センチから10センチはあろうかというこの履きもの=サボは、よく似合っていたのだ。日本にサボという名称を伝えたのは、当時の女性ファッション誌。フランスの雑誌に出ていたサボを、そのままの形と名で紹介した。困ったのは、当時アメリカやイギリスへ出かけた人たち。あちらでサボといっても、まったく通じない。それもそのはずで、英米ではこの種の履きものはクロッグというのが常識だったのである。クロッグというのも、元を 糾せばスウェーデンの伝統的な履きものだったのだが、コルクや木底でつっかけ式の靴というと、もっぱらクロッグの名で通っていたのだ。これは1990年代、再び流行を見るが、日本ではまだサボと呼ばれていた。