年代別『流行ファッション』物語:「シャーベット・トーン」1962

62年・春夏向けの流行色のテーマ

1962(昭和37)年の春から夏にかけて、日本の街はシャーベット・トーンという氷菓子を思わせる甘く冷たい調子のパステルカラーにおおわれた。元々は日本流行色協会による62年・春夏向けの流行色のテーマであったが、これを繊維メーカーの東洋レーヨン(現・東レ)と化粧品の資生堂、お菓子の不二屋、それに西武百貨店が共同して市場展開し、知名度96.87%という驚くべき成功となったのだ。このような業種の異なるいくつかの企業が共同して繰り広げる宣伝方法をコンビナート・キャンペーンというが、シャーベット・トーンの成功は今でも語り継がれる一大ファッション現象とされている。このころファッション業界でもっとも力のあったのは東洋レーヨン、帝人といった繊維メーカーで、東洋レーヨンはすでに1959(昭和34)年、スキーの三冠王トニー・ザイラーを起用した「ザイラー・ブラック」なるキャンペーンを展開し、日本に「黒のブーム」を巻き起こしていた。

ファッション蘊蓄事典(2004年(平成16年)9月発行)デジタルより