DANSEN FASHION 哲学 No.27 澁澤龍彦:わが夢想のお洒落(8)
たしかに潤一郎の言う通り、「ばさら」時代の綺羅を飾った武士たちの姿は、私たち現代人の目を見張らせるような、華麗さを誇っていたことであろう。
『太平記』などに描かれた当時の茶会では、並みいる大名たちは、いずれも思い思いの緞子金襴の衣裳をまとって、舶来の虎の皮や豹の皮を敷いた椅子に倣然と腰かけていたとう。後世の衰弱した枯淡趣昧の茶会とくらべて、何という相違であろう。しかも当時の茶は「闘茶」と称して、さまざまな種類の茶を出し、その産地を当てる一種の賭博だった。
もちろん金や賞品も賭けるし、茶会のあとでは酒になり、遊女がホステスとして席に侍ることもあるのである。それは全く享楽的な雰囲気のものだったらしい。
・・・次回更新に続く