服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
70年代の華となった民俗調ファッション
「フォークロア&エスニック・ファッション」1970~1978
70年代に入るころから、地球の資源を大切にしようとするエコロジー運動の考え方が高まり、それとともに自然や田舎に関心を寄せる素朴な感じのファッションが人気を集めるようになる。ヨーロッパの田舎に見る農民たちの服装や伝統的な民俗衣装などがそれで、これらをフォークロア・ルックなどと呼んだのだ。こうしたファッションは60年代のヒッピーたちのボヘミアン・スタイルを継承したものともいえるが、よりロマンチックでメルヘンチックなところが、70年代のフォークロア・ルックの特徴だった。ちょうど70年に「ジャングル・ジャップ」という店を開いたケンゾー(高田賢三)の日本的なモチーフのファッションもこれに大いに寄与した。ケンゾーはさらに世界各地の民族衣装にモチーフを得たファッションを打ち出し、ここにエスニック・ルックのリーダーとしての地位を確立してゆく。こうしてフォークロア(民俗調)とエスニック(民族調)は70年代の華となった。