服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

「ノーブラ・ルック」にシースルー・スタイル

年代別『流行ファッション』物語:「ノーブラ・ルック」にシースルー・スタイル

「シースルー・ルック」1968~1969

1968年、サンローランが発表したのが肌が透けて見えるセクシーなルックス。フランス語では「トランスパラント」というが、マスコミはこれを「シースルー・ルック」として紹介した。日本語でいうなら「透け透けルック」である。女性のシースルーなら大歓迎というのが男たちの見方だが、このファッションは若い男たちにも取り入れられて流行した。レースやボイル、オーガンジーといった薄手の生地を使用したシャツが中心だったが、中にはシースルー調のパンタロンといった過激なものも見られた。こうした服装を見せるファッションショーが開かれたり、「シースルー着用」を義務づけたパーティーが行われたのもこのころのこと。暑い盛りはともかく、雪の降るような寒い季節にもシースルー・ルックの若い男女が現われて物議をかもしたものだった。当時流行し始めた「ノーブラ・ルック」にシースルーというとびっくりするだろうが、そんなファッションもたしかにあった。