昨日と今日の男の博物誌:サム・シェパード 男子專科 1986年2月号 NO.263

男子專科 1986年2月号 NO.263 より

サム・シェパード(アメリカ:劇作家・俳優:1943~)-5

天才?不満足が少し深いだけさ。

オレンジ摘みに牛や半の世話。スティーブ少年を取り囲んでいたのは、まさに映画『カントリー』(ジェシカ・ラングと共演したこの映画で俳優サム・シェパードは荒廃してゆくアメリカの農村の疲れ荒んだ農夫を演じています)に出てくるような土のにおいに満ちた日日でした。

この頃のスティーブは、家族の者から将来は獣医にでもなるんじゃないか、と思われていたようです。動物たちがなによりの友だったからですが、事実、羊の育成とジャーマン・シェパードの飼育にかけては相当な腕前を誇っていたらしい。サム・シェパード・ロジャース・ジュニアの育てたシェパードが品評会でトロフィーをさらっていたというのは、冗談じゃなくホントの話だといいます。

筋金入りのこのカントリー・ボーイがふとしたことで演劇に惹かれるようになるのは、マウント・サン=アントニオ・カレッジに進んでからのことです。キャンパス劇団の素人芝居に出て「人好きのする酔っぱらい」の役を演じたのがきっかけとなり、つづいてキャンパス・マガジンに「うどん粉病」と題する処女戯曲を書くという積極果敢さを発揮して見せたものでした。

・・・次回更新に続く