DANSEN FASHION 哲学 No.27 澁澤龍彦:わが夢想のお洒落(11)
醒めた現実生活で精神の洒落を想う
「凡そ日本人の皮膚に能衣裳ほど映りのいいものはないと思う」と書いた贅沢好きの潤一郎にしても、自分では能衣裳なんか着たことはなかった。
私は派手なものが好きなつもりだが、それでも自分の趣味が無意識のうちに、既成の公認された美学に支配されているらしいのを知って、むしろ自分で驚くことがある。私の愛用しているスゥェーターやポロシャツの類いは、ほとんどすべて臙脂、茶、朽葉色、ダーク・グリーン、チャーコール・グレーの系統であるが、これは要するにパリの色なのだ。決してフランスかぶれではないつもりなのに、どうやら私はパリジャンやパリジェンヌの好む色を、長い年月にわたって無意識のうちに選択しているようである。
・・・次回更新に続く