服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

パリ・サンジェルマンに登場したオシャレな「イエイエ」族

年代別『流行ファッション』物語:パリ・サンジェルマンに登場したオシャレな「イエイエ」族

「イエイエ」1964~1968

1960年代中期、パリ・サンジェルマンに登場したオシャレな若者たちを「イエイエ」と呼んだ。イエイエは当時の流行歌の一節からとったものとか、ビートルズの映画『ヤー!ヤー!ヤー!』からきたものともされるが、ともかくその響きはパリの最先端の風俗を感じさせるものであった。ぴたぴたのセーターに細いパンツや短いスカート、またベルト付きのハイウエスト・コートなどいかにもパリっ子好みのオシャレな服装が特徴で、そこにはモッズ・ルックやビートルズの影響も見て取れた。こうした「イエイエ族」たちがサントロペやコートダジュールといったリゾート地にも進出し、独特の風俗を作ってゆくようになるのだが、当時パリに在留してファッションの勉強をしていた高田賢三が、そうしたイエイエ・スタイルを日本のファッション雑誌にレポートしていたことを思い出した。もちろんケンゾーさんも、「イエイエ」そのもののスタイルでした。