未来世紀ブラジル
近未来を描きながら、むしろクラシックなムードが大成功。
この10数年、SFというジャンルが映画の中で占める地位はますます重要なものになって来ている。しかし、SF映画の製作本数が増すにつれて、気になることも増えて来た。
今日製作されるSF映画が、あまりにもリアルであるという点だ。
具体的に言うならば、今日の科学から予想される未来が、極度に手の入り組んだSFX(特殊効果)を駆使して描かれた映画しか製作されていないというのが気にくわない。確かに科学的な裏付けというものは、SF映画にとって必要な要素だろう。しかし、それにがんじがらめに縛られたのでは、SF映画にとって最も大切な”空想”という楽しみを殺してしまうのではないだろうか。
未来を描く方法にだっていろいろな手段があるはずだ。たとえば『1984』では、過去のある時点を基準にした”未来”が描かれる。この作品『未来世紀ブラジル』も、こうした”夢”をふんだんに盛り込んだ映画なのだ。
映画のタイトルに”ブラジル”とあるが、これはなにもソコを舞台にしているワケではない。ただ、1930年代に大流行したポピュラー・ソング”ブラジル”が、この映画の大事なポイントとなっているのだ。