モロン

男子專科 1986年9月号 NO.270 より

男子專科 1986年9月号 NO.270 より

地球にやってきて名作映画をかたっぱしからパロってしまう宇宙人たち

この夏、日本の映画界では”猫”が大活躍しているようだが、その、一方でSFモノも相変わらずの大人気。『スペース・キャンプ』を始め、『ショート・サーキット』『ラビリンス』『スペースインベーダー』等々、話題作が目白押しだ。そうしたなかでちょっと変わったSF映画が公開される。『モロン』というイギリス映画がソレだ。

主人公は宇宙の彼方からさまよい流れて来た4人のブロン星人。ところがこの4人、異星人とはいうもの見た目は地球人と変わりはないしそのうえ使っているのは英語にソックリなブロン語。名前までがバーナード、デスモンド、サンドラにジュリアンと、まるで英米人そのもののノリなのだ。そんな彼らの乗った宇宙船(これがレンタのボロ宇宙船!)が迷い子になってしまう。しかし、呑気なバーナードは、深刻なこの時にあっても平気でボール遊びに興じるありさま。頭に来たデスモンドは、ボタンをひと押し---宇宙船はバーナードをひとり置き去りにして、近くに見えた星第4惑星へ・・・・・・。その地球では、イギリスはロンドンのハイウエイに、突如末確認飛行物体が不時着したとあって大騒ぎ。だが、出て来た宇宙人はイギリス人にソックリで、おまけに英語まで話すとあって、科学者たちは恐れふっとび、尋問に乗り出すが、4人のうけ答えはどこかトンチンカン。かくて彼らは、モロン(精神薄弱)とのレッテルを張られるが、ひとりのTVレポーターの機転で一躍人気モノになってしまう。一方、ひとり宇宙に残されたバーナードは宇宙船のヒッチハイクに成功したものの、途中で放り出されてしまい、これまた偶然にも地球はアメリカのアリゾナに着陸。だが、最初に見たゴミ箱を生物と勘ちがいしたために、狂人として精神病院に入れられてしまう。そんなバーナードが病院のテレビで見たものは---今や人気アイドル歌手になってしまった例の3人の宇宙人たち。バーナードは彼らの成功に刺激され、病院からの脱出を計画するが・・・・・・。

ハッキリ言って金はかかっていないし、宇宙人とは言っても人間と寸分変わらず、おまけに英語まで話すといった有様だからして、本格的なSFファンには満足いただけない作品だろう。しかし、コメディとして見るならば---『未知との遭遇』や『カッコーの巣の上で』『スティング』『野性のエルザ』等々のパロディがいたるところに散りばかまれた傑作なのだ。

監督は『フラッシュ・ゴードン』のマイク・ホッジス。脚本はイギリスのTV界にソノ人ありと知られるメル・スミス、グリフ・R・ジョーンズのふたり組み。彼らは、『モンティ・パイソン・シリーズ』と並び称される『九時のニュースじゃあるまいし』の脚本家だが、コノ映画では宇宙人としても出演そのアクの強い笑いを自から作り出す。単なるパロディ映画とも一味違う、本格的な笑いを体験したい人には是非とも見てもらいたい一作だ。