日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ブレザー・コート

海外でまったく通用しないファッション用語:ブレザー・コート

ブレザー・コート
blazer coat

正しくは
【ブレイザー】
blazer
または
【クラブ・ジャケット】
club jacket

フランネルの1枚仕立て、メタル・ボタン、エンブレムなどを特徴とするスポーティーな背広型ジャケット。夏季用のものには白の貝ボタン付き、薄い生地使いのものもあるが、総じてネイビーブルーや真紅、白などはっきりした色使いのものが見られ、年齢、性別を問わず着用される。また、アクセサリーの変化によって、フォーマルな用途にも着ることが可能で、オールマイティ・ウエアとしての特性も持つ。海外ではブレイザーだけで通じる。

オリンピックの入場行進などで、アナウンサーがよく「ブレザー・コートが鮮やかです」などと絶叫するシーンに出くわすことがあるが、ブレザー・コートというのは、どうやら日本人だけのようである。ここでいうコートとは上着のことで、これはまったく正しい英語だが、ブレザーの場合は、それだけであのスポーティーなジャケットのことをさす。このきわめてユニークな上着が誕生したのは一八七七年頃、ロンドンで行われたオックスフォードとケンブリッジの有名な大学対抗ボート・レースでのこと。ケンブリッジの選手たちが真紅(一説には白赤の縞柄)の上着であらわれ、それがテームズ川の川面に映って、ゆらゆらと炎のように見えたことから「おー、ブレイザー(燃えるようだ)!」という観客の声が上がり、それがブレザーの語源になったというのである。もちろん、ほかにもいくつかの語源説があるが、いちばん知られているのはこの逸話。したがって、ブレザーはブレイザーと発音すればいい。ヨーロッパではクラブ・ジャケットという呼称もあり、各種のスポーツ・クラブのユニフォームとなっているネーミングである。ブレザー・コートというのは完全な古語だ。