男子專科 1986年3月号 NO.264 より
オーソン・ウエルズ(アメリカ:映画作家&俳優:1915~1985)-1
頂上から始めるのはつらいものさ。
「終りよければすべてよし」という幸福哲学の信奉者の目から見たら、映画作家兼俳優であったこのヒトの人生は、まさに一個の悲惨として映ったのではないでしょうか。
10で神童、15で才子、20歳過ぎればただのヒトなどと俗に言いますが、しかし、このヒトは20歳を過ぎてもその神童ぶり、ワンダー・ボーイの鬼オを鮮烈なまでに示した例外として知られています。ダブリンのゲイト・シアターの舞台に立って主役級の俳優としてのデビューを果たしたのが16歳のときだというから、すごい。いまのアイドル君も真っ青といった早熟、激熟ぶりです。
そして、18歳でシェイクスピア劇の舞台をつとめ、20歳のときにはオール黒人キャストによる『マクベス』を演出してみせる。その後、ジョン・ハウスマンと組んでニューヨークにマーキュリー・シアターを創設したのがわずか22歳のときだというのですから、まったくあきれ返るほどの天才小僧、アバンギャルド小僧だったようです。
・・・次回更新に続く