服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

「ツッパリ」は、昔から存在する若者の特権のようなもの

年代別『流行ファッション』物語:「ツッパリ」は、昔から存在する若者の特権のようなもの

「ツッパリ・ファッション」1970

世の中の常識というものに対して反抗の姿勢を見せる若者たちの「ツッパリ」ファッションは、昔から存在する若者の特権のようなものだが、とくに1970年代からはこうした傾向が顕在化して大人たちを驚かせるようになってきた。とりわけソリ(剃り)を入れたリーゼントヘアにボンタンとかドカンなどと呼ばれる太いパンツをはいたツッパリ少年や、ロンタイと呼ばれる超ロングな制服スカートを愛用するズベ公少女たちは巷の風物詩ともなったものだ。1950年代のロックンロール風俗の再来ともいえる「フィフティーズ」たちもこの一種で、これは矢沢永吉の「キャロル」など音楽グループの影響を強く受けている。これにはまた74年に封切られた映画『アメリカン・グラフィティ』の影響も見られる。一方、70年代初頭から台頭してきた「暴走族」の風俗も、ツッパリ・ファッションを代表するもののひとつだ。こうしたファッションは世に若者のいる限り、けっして無くなるものではないのである。