男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

男子專科 2014 AUTUMN vol.2 

サヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけたスウィンギン60’Sのピーターパン(10)

ナッターズ オブ サヴィル・ロウの誕生

紳士服の聖地サヴィル・ロウに新参のテーラーが開業するのは約120年ぶり。老舗の反応は最初、冷ややかだった。「半年店を維持できれば上出来なチャレンジだよ」という意見が大半だったのである。しかし結果は逆だ。誰もがスリムスーツを着ていた1960年代、トミー・ナッターの提案したワイドラペル、フレアージャケット、バギーパンツはロックアーティストたちに歓迎された。

1969年に発表されたアルバム『アビイ・ロード』では、リンゴ・スター、ジョン・レノン、ポール・マッカートニーがトミー・ナッターのスーツを着用している。リンゴは、お洒落なスタジオミュージシャン風に見える黒のエドワーデイアン調ロングジャケット。ジョンは教祖風の白いフレアースーツ。そしてポールは敏腕プロデューサーが着ているようなダブル胸ストライプスーツ。そこには、アイドルグループだった頃のユニフォーム制は完全に消失し、3人3様の個性が見事にアピールされている。トミー・ナッターの能力が見事に発揮されたデザインだ。

・・・次回更新に続く