男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

男子專科 2014 AUTUMN vol.2

サヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけたスウィンギン60’Sのピーターパン(19)

トミー・ナッターが遺したもの

学生時代に洋服屋のアルバイトをしたことがきっかけで、デヴィットは次第にファッション業界の面白さに目覚めていく。赤い水玉のシルクトランクスをトミー・ナッターの店へ売り込みにいったら大笑いされ、その後にトミーは、「うちはテーラーだから下着は必要ないけれど、違う店を教えてあげるよ」と、紹介してくれたのは、ブラウンズのスターバイヤーだったリチャード・ジェームス!当時まだ大学生だったデヴィットにとって、トミー・ナッターは心の師であり、憧れのスターだったのであろう。そんな彼にトミー・ナッターの魅力を語ってもらい、20年越しの取材を閉じることにしよう。

「トミー・ナッターのデザインは、創造性と夢にあふれていると、いつも感じるんだ。最初にテーラーリングと音楽を結びつけたことだって、いつも自由に夢を求めていたトミー・ナッターだからこそできたことだと思う。ビッグショルダー、ワイドパンツ、ワイドラペル、ツイードのプレイドスーツ、デニム・スーツ。彼のアーカイブには、彼の思想や精神性が凝縮しているように感じるよ」

純粋で大胆。生意気で繊細。永遠にピーターパンの心をもつトミー・ナッターはサヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけ、音楽界のダンディを誕生させた。職人魂のこもる彼のスーツは、ハイクォリティで伝統を少し取り入れ、貴族趣味とポップが共存した素敵なものだった。トミー・ナッターは全世界を魅了し、自身もサヴィル・ロウ初のダンディとして一時代を築いたのである。

・・・了