サヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけたスウィンギン60’Sのピーターパン(17)
トミー・ナッターが遺したもの
それからのティモシー・エヴェレストの生活は、毎日がメリーゴー・ラウンドに乗るような刺激に満ちたものになった。著名なスタイリストが来て広告の打ち合わせをしたり、『i・Dマガジン』に掲載するための新作スーツを製作したり、エルトン・ジョンの全米ツアーにも参加したことがあったという。
「トミー・ナッターはいろいろな噂もある人だけど、ほんとうは誠実な人だった。彼ほどナイスガイで優しい人はいない。特筆したいのは、そのコミニュケーション能力。カスタマーと話して、その人の特別な部分を目覚めさせる。それはビスポークで欠かせないもの。彼は60年代の人で、40年代のスタイルを愛して取り入れていた。ぼくは60年代が好きで、その時代のすべてのものが頭のなかで渦巻いて、そのいいとこ取りをして形にする。そうした思考回路みたいなものはトミー・ナッターから、しっかりと学んだ。トミー・ナッターの形だけマネればそれはコピーにすぎない。大切なのは彼の哲学を、いかに現代に生かすかなんだ」
・・・次回更新に続く