男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

男子專科 2014 AUTUMN vol.2

サヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけたスウィンギン60’Sのピーターパン(16)

トミー・ナッターが遺したもの

約20年ぶりに出会ったティモシーはさまざまな経験をつんで、ビジネスも順調。マスターテーラーとしての自信に満ち、風格さえ漂っていた。以前は師匠であるトミー・ナッターのことを語らなかったが、2011年にロンドン&テキスタイル博物館で開催された『トミー・ナッター回顧展』では、ゲストキュレーターとして当時を振り返ったという。

ティモシー・エヴェレストは10代をウエールズで過ごし、祖父が仕立て屋をしていた関係で、ロンドンへ出てテーラーをめざす。1981年、新聞でトミー・ナッターがサヴィル・ロウで求人募集をしているのを偶然に発見。さっそく店へ行って会見を申し込むが、忙しいトミー・ナッターにはなかなか会えない。何度も来るティモシーを見かねて、受付係の女性がティモシーの味方をしてくれる。そのおかげでトミーにも会うことができ、結果は見事に合格。

店へ出て驚いた。顧客はビートルズのメンバー全員。ミック・ジャガーの名が入ったスーツもある。ティモシーはトミー・ナッターが誰なのか知らないで応募したのである。「サヴィル・ロウのテーラーだというから、首にメジャーテープを下げた爺さんだと思っていたら、長髪でメチャクチャに格好いい奴が出て来たからおかしいと思ったよ(笑)」とティモシー。このときの美人受付嬢は後に彼のお嫁さんになる人。運の良い人はこういうものだ。

・・・次回更新に続く