1970 Trend Style:Maxi Coat(マキシ・コート)
69年から70年代はじめにかけて、きわめて丈の長いコートが流行した。これをマキシ・コート(マクシ・コートとも)という。
マキシとはマキシマムmaximum(最大限)の略で、ミニマムminimum(極小)の反対語。つまり、くるぶしを隠すくらいの床すれすれの長い丈のコートを、そう呼んだのだ。
こうした丈をマキシ・レングスといい、それはコートだけでなく、ワンピースやスカート、ベストなどにまで及んだ。
このような丈の長い、ぞろっとした服が流行したのには理由がある。アメリカのファッション業界新聞WWD(ウーメンズ・ウエア・デイリー)が仕掛けた「ロンゲット作戦」というのがそれ。
ミニスカートの流行に業を煮やした業界が、丈を長くして生地代でもうけようという考えが、この一大キャンペーンの背景にはあったのである。
ミニはもう終り、これからは長目のファッションが流行り!ということで、フランス語でロンゲット(ほっそりした・細長い)と名づけられたこの作戦は、まず69年のパリ・コレではじまり、70年のコレクションにも引き継がれた。
結果はどうだったか? ロンゲット作戦は失敗に終わった、ミニはやはり強かったのである。時代はもはやファッショッ業界の思惑で動くようにはできていなかったのだ。
そして、世の中にはミニとマキシ、さらにふくらはぎのまん中丈のミディ(フランス語ではミモレ)が共存することとなる。
そうした中でカッコよかったのは、超ミニとロングブーツに組み合わせて着るマキシ・コートの着こなし。もちろん、コートの前はあけて魔女のごとく、さっそうと歩くのである。
そして、パンタロン(ワイド・フレアパンツ)との組み合わせがこれに続く。肩幅狭く、上半身ぴったりのほっそり感を強調し、裾広がりのシルエットでバッサバッサ歩くのが、当時の流行だったのだ。
こうして70年代の多様化ファッションの時代は、幕を開けた。