CINE PREVIEW:愛と哀しみの果て

男子專科 1986年4月号 NO.265 より

愛と哀しみの果て

冒険家と男爵夫人の恋人を1910年代のアフリカというステキな舞台にのせて描く大作

最近の洋画といえば、およそ80パーセントが原題を直訳したカタカナ・タイトルになっている。昨年度のベスト10がいろいろ発表されたが、それをみると日本的な漢字とひらがなだけのものはほんのわずかである。カタカナ職業やカタカナ会社名がカッコいい!ということで増える一方の今日だから、もとが外国製の映画では当然のことかも知れない。

ところが、そんなカタカナ・タイトル全盛時代だけに、たまに日本語のタイトルにぶつかると、とても、うれしくなるものだ。昨年は、『恋におちて』『田舎の日曜日』の2作品の印象が強かったが、今年になって最初のお気に入りが、この『愛と哀しみの果て』である。

タイトルを見た時、私は思わず『愛と青春の出発』を思い出したが、『・・・・・・の果て』となるとちょっとおじさん、おばさん好みのタイトルではないかな?と思い、多くの大学生に聞くと、”フィーリングがある” ”すごくロマンを感じる” ”アンティークだ”などの言葉がでてきて、3人に2人は”いいタイトルだ”として気に入っていた。

内容がいいとタイトルに凝る!というのは洋画の常識といわれるが、原題の『アウト・オブ・アフリカ』(アフリカの日々)を『愛と哀しみの果て』とした裏には、宣伝部の人たちの大変な苦労があったに違いない。ロマンを感じてしゃれている半面、演歌的ムードも匂ってくるので激しく論議を交したというが、この映画のスタッフやキャストの顔ぶれを見ると、これはいける!とタイトルに納得してしまう。