日本でそもそも「◯◯族」という言葉が使われた最初は、1948(昭和23)年の「斜陽族」からだという。太宰治の小説『斜陽』(1947年12月刊)から出たもので、第2次世界大戦後に没落した上流階級の人たちをそう呼んでおり、これは48年6月、太宰治が玉川上水で心中事件を起こしたところから、一気に広がったものだ。これが51年には会社の車を乗り回し、高級料亭で遊びまくる「社用族」というように転用されるようになるが、日本における「族」の歴史なんてそんなものだったのだ。いずれもファッションとはなんの関係もないが、徒党を組んでとんでもないことをやらかす若者集団という意味では、やはり「太陽族」を日本の「族」の元祖としなければならないだろう。そして、そのリーダーと目された青年こそ石原慎太郎氏(元・東京都知事)であったのだ。
強面のツッパリ少年たち
80年代「ヤンキー族」1983~
透き通るような調子の薄手カーディガンにペラペラのマンボズボン。足の半分ほどしかない女もののサンダルを引っ掛けるようにして歩く強面のお兄ちゃん。そんなツッパリ少年たちを「ヤンキー」と呼ぶようになったのは、たしか1983年ごろからのことだった。もちろんヤンキーというのは昔からある言葉で、本来はアメリカの俗語で「米国人」を意味するが、日本ではなぜか「不良少年・少女」の意味で古くから用いられていた。ただし、ここでいうヤンキー族の「ヤンキー」というのは発音が異なる。昔のヤンキーは大リーグの『NYヤンキース』のように語尾下げで発音するが、今のヤンキーは文章で表現するのはむずかしいが、大阪弁風に「キー」の部分を高めに強く発音しないと気分が出ないのだ。そしてこのヤンキー族は大阪を中心とする関西圏から広島にかけての西日本に圧倒的に多いのも特徴のひとつとなっている。そういえば「ヤンママ」というのもヤングママという意味ではなく、元ヤンキーのツッパリママさんという意味なのだ。