日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ループ・タイ

海外でまったく通用しないファッション用語:ループ・タイ

ループ・タイ
loop tie

正しくは
【ウエスタン・タイ】
western tie
【ボーロ・タイ】
bolo tie
【ボーラ・タイ】
bola tie

紐タイ=紐状のネクタイの一種で、襟もとの金具飾りなどに紐を通し、ループ(輪っか)をつくってあしらうもの。日本では中高年男性に特有のネックウエアとして知られるが、もともとはアメリカ西部のカウボーイたちに愛用されたものが原型とされ、ためにウエスタン・タイという正しい名称がある。さらに南米アルゼンチンのガウチョ(牧童)たちにもルーツが求められ、ここからはボーロ・タイ、ボーラ・タイの名称が生まれている。

1970年代の省エネ・ルックの名残だとかオジンくさいだのと、なにかと評判の悪いループ・タイだが、これは歴とした和製英語。本来はコード・タイとかストリング・タイなどと総称される紐タイのひとつなのである。ループ・タイという名称そのものは1960年代からあって、一時はあらかじめ結び目がつくられ、それに紐を通した 簡便なつくりのネクタイの商品名だったこともあるが、いまではすっかりあの紐タイをいう日本英語となってしまった。ところが、そのルーツを探すと、なんとアメリカ西部の牧場にあった。カウボーイたちがウエスタン・シャツの首元に飾っているアクセサリー、あれがループ・タイの原型なのだ。このウエスタン・タイよりもっと興味をひかれるのが、南米アルゼンチンのガウチョたちに愛用されているボーロ・タイとかボーラ・タイと呼ばれる紐タイ。ボーラ(これは女性名詞で,ボーロは男性名詞)というのはもともとスペイン語のボレアドラス boleadorasからきたもので、これはガウチョたちが牛を捕えるのに用いる投げ縄の一種で、縄の先に2、3個の鉄球がついている。これをヒントに作られたのがボーロ・タイというわけで、ひょっとしたら、こちらのほうが古いかも知れぬ。