服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

プリンセス・ダイアナのファッションが注目される

年代別『流行ファッション』物語:プリンセス・ダイアナのファッションが注目される

「ダイアナ・ファッション」1986

1981年、イギリスのチャールズ皇太子がダイアナ・スペンサー嬢と結婚し、プリンセス・ダイアナのファッションが注目されるようになる。そうしたダイアナ・ファッションが日本で大人気となったのは、やはり1986(昭和61)年の初来日の時だった。いかにも上品でかつ現代的な新しさもあるダイアナ妃のドレスが話題を集め、ダイアナ・カットと呼ばれる独特の髪型が若い女性の間で流行を見る。時はあたかもバブル経済スタートの時代。こうしたコンサバ・リッチ感覚のファッションは時代の流れに合っていた。そして、まもなくインポート・ファッション・ブームが始まるのだ。1958(昭和33)年から起こった「ミッチー・ブーム」や、1993(平成5)年、皇太子のご結婚による「雅子様フィーバー」など、皇室にまつわるファッションのブーム的現象は数々あるけれど、外国の皇太子妃のことが日本でここまで話題となったのは、きわめて珍しいことでもあったのだ。