「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

コカ・コーラのボトルは「ホッブル・スカート」から生まれた

ファッション・トリビア蘊蓄学:コカ・コーラのボトルは「ホッブル・スカート」から生まれた

コカ・コーラは1886年アメリカ・ジョージア州アトランタで、薬剤師のDr.ペンバートン(ジョン・S・バートン博士)の発明した禁酒用飲料として誕生した。1887年には特許を取り、1894年には初めてコカ・コーラの瓶詰めができる。しかし、コカ・コーラの人気から模造品が続出するようになり、その対策に苦慮した結果、他者が絶対真似できない形の瓶を作ることにしたのだ。そのヒントとなったのが、当時流行していた「ホッブル・スカート」という名のスカート。ホッブルとは「よちよち歩き」という意味で、裾幅を極端にすぼめた形であるところからこの名が付いたもの。これは当時最も人気のあったデザイナー、ポール・ポワレが1910年に発表し、1914年ごろまで流行の渦中にあったスカート。腰がくびれ、膝から裾にかけて細くなるホッブル・スカートのシルエットはコカ・コーラのボトルそのものではないか。「コントゥアーボトル」と呼ばれるこの形は1915年に誕生し、暗闇で触ってもコカ・コーラとすぐわかるグッドデザインとして人気を博したのだ。