日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ジージャン

海外でまったく通用しないファッション用語:ジージャン

ジージャン

正しくは
【デニム・ジャケット】
denim jacket
または
【ジーンズ・ジャケット】
jeans jacket

ジーンズの特徴的なデザインをそのまま踏襲した軽快なデニム・ジャンパー。すなわち、多くはブルー・デニムを使い、シャツ・カラー、変わった形のポケット、独特のステッチ・ワーク、アルミ製のリベット・ボタンなどを特徴とする腰丈のショート・ジャケットをいう。日本ではジーン(ズ)・ジャンパーの略としてジージャンといったり、GパンのながれからGジャンと表記したりするが、本場アメリカではデニム・ジャケット、イギリスではジーンズ・ジャケットというのが一般的である。

このいかにも軽快なジャケットを、日本では「ジージャン」とか「Gジャン」というようになったのは、1970年代になってからのことだという。それまではウエスタン・ジャンパーとか、単にデニム製のジャンパーなどと呼んでいたようで、ジージャンは70年代の空前のジーンズ・ブームを迎えるころ、ようやく市民権を得たといってよいだろう。ところで、ジーンズという名称は1950年代に入ってからアメリカで一般化した、と〔ジーンズ〕の項で紹介したけれど、これは1947年のラングラー社の11MWという製品に起因するのである。同社はこれをMen's Westernと呼び、ジーンズの名称第1号となったのだ。それまではデニム・パンツとかオーバーオールと呼ぶのが一般的で、アメリカではリーヴァイズという通称があったくらいなのである。ちなみにリーではカウボーイ・パンツと呼んだ。このように言葉の変遷をたどっていくだけでも楽しいが、ことジージャンに限るとアメリカにはヒップスターhipsterという俗称もある。これは「先端派」とか「新しもの好き」といった意味で、1950年代のアメリカの若者たちには、かっこうの流行語だったのだ。