DEGE & SKINNER:ミリタリー系テーラーならではのツイードジャケットを探索する・・・2
メスジャケットとは着丈の短い上着と、側章つきのトラウザースで構成された軍服のひとつ。イブニング・フォーマルに使う格式の高い服で、デザインもスタイリッシュだ。通常はロイヤルブルーだが、トロピカル用に白で作ることもある。実は、風変わりな歌手とはマイケル・ジャクソンのことだった! しかもディジー&スキナーの売上は軍服が約25%にすぎない。それ以外はスーツなどのシビルクロージングなのである。まったく英国人のユーモアは油断していると見抜けないことがある。
軍服は立ち姿が美しい服である。肩を構築的にして、ウエストを絞り胸を豊かに見せる。アームホールを高くとり、腕の運動性を高める。着る人を立派に見せ、同時に機能性を保つ軍服の特性は、英国の市民服にも多大な影響を与えた。この店のスーツに人気があるのも、こうした特長が生かされているからであろう。
しかし筆者がもしここで服をオーダーするなら、ツイードのジャケットが面白いと思う。なぜならノーフォークジャケットなど、ツイードのハンティングジャケットと軍服には機能的な共通点が多いからである。ウイリアムに質問すると「実は1938年にフィットウエルというディテールで父が特許をとっています。背のライニングをひもで閉めたり緩めたりできるので、ハンティングのときに便利」と教えてくれた。
その上着が吊るしてある場所で、面白い服を発見した。背のウエスト部分に約5センチのほどの長さで、ダーツを等間隔に4本切ってある。「これは4バックと呼びます。背ベルトを嫌う客に勧めしています。背の運動性は同じなので」と、店主。
筆者はこれを見るのは初めてではない。実は昔、仕立ての師匠である服部晋に、某自動車雑誌用のためのドライビングジャケットの製作を依頼した。そのときのデザインが4バックだったのだ。東西の仕立て屋の結びつきの歴史に思いを馳せ、なんだかとても嬉しくなった。
・・・【英国スペシャル・遠山周平の仕立て屋を巡る冒険:DEGE & SKINNER】了