服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
DC系の新しいメンズ・ブランドが続々誕生
「メンズファッション・ブーム」1986
日本で「第2次メンズファッション・ブーム」と呼ばれる動きが起こったのは、1980年代後半のことだった。80年代に入ったころから「メンズ第3の波」などと称されるDC(デザイナー&キャラクター)系の新しいメンズ・ブランドが続々誕生し、すでにその土壌はできあがっていたが、1986(昭和61)年5月、『メンズ・ノンノ』という新しいファッション誌の登場によって、それはブレイクの時を迎える。同誌創刊号は30万部を完売。都市部では発売当日にすべて売り切れるという状況だった。これをきっかけに『ファインボーイズ』など同系のメンズファッション誌が次々と創刊され、1960年代後半以来のメンズファッションのブームが訪れた。雑誌の内容もグラビアを中心により女性誌的な方向性を強めるようになり、街には「まるでメンズ・ノンノから飛び出したような」と形容される男の子たちが跋扈するようになった。