服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
きっかけはC・メイザーが著した『サンタフェ・スタイル』の本
「サンタフェ・スタイル」1989
アメリカはニューメキシコ州の州都サンタフェに見られる生活文化が、1987年頃から注目を浴びるようになった。きっかけはクリスティン・メイザーが著した『サンタフェ・スタイル』という本の出版からで、これがひとつのデザイン様式として人々の関心を強く集めるようになったのだ。サンタフェはネイティブ・アメリカン、ヒスパニック、アングロサクソンの三つが入り混じった独特の文化を持つ地域で、そのエキゾチックな魅力から多くのアーティストが集まる場所としても知られる。たとえば「テックスメックス」などという言葉があるが、これはサンタフェに見るテキサス風のメキシコ料理をいったもの。これがそのままウエスタン(テキサス)とメキシカン(メキシコ)をミックスさせたエスニック・スタイル(民族調の装い)も意味するようになり、世界的にも流行するようになった。そういえば、宮沢りえが『Santa Fe』という名のヌード写真集を出したのは1991年11月のことだった。