服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
『おニャン子クラブ』御用達の店で全国から少女たちが殺到
「セーラーズ・ファッション」1985~1988
渋谷・公園通りの脇道に入ったところにあるファッション店「セーラーズ」がブレイクし、″セーラーズ現象″などと呼ばれるようになったのは1986(昭和61)年のことだった。前年デビューした女子高生たちのユニット『おニャン子クラブ』御用達の店といったことで名前が知れ渡り、全国から少女たちが殺到して行列を作るようになった。「セーラーズ」は三浦シズカの経営によるが、これより少し前の81年ごろ、下山好誼の経営による「ボートハウス」(青山)も、″ブルートラディショナル″というキャッチフレーズで人気を集め、客の行列が名物となっていた。このように特定の店に行列を作ってまで客が押し寄せるようになったのも、きわめて80年代的なファッション現象といえるだろう。これには83年にオープンした東京ディズニーランドにおける時間待ちの行列や、アイスクリームの「ホブソンズ」や「ハーゲンダッツ」での行列といったことも、少なからず関係しているのではないだろうか。並ぶことをそれほど苦にしない若者たちが増えてきたのである。