服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

年代別『流行ファッション』物語:パリの奇才、ジャンポール・ゴルティエによって提唱された

パリの奇才、ジャンポール・ゴルティエによって提唱された

「アンドロジナス・ルック」1984

80年代の半ば、スカートを好んではく男の子たちが多く登場し、世間は60年代の「ユニセックス・ファッション」の再来として好奇のまなざしを向けた。こうした男女の性差を超越したファッション表現を、当時は「アンドロジナス・ルック」と呼んだもので、アンドロジナスとは「男女両性の、雌雄両花のある」という意味。つまりは両性具有のファッションをいい、男の服を女性が着たり、女服を男性が着たりするまことに現代的な着装の考え方を示しているのだ。これは最初、パリ・ファッション界の奇才、ジャンポール・ゴルティエによって提唱されたもので、「スカート・フォー・メン」などと呼ばれる男のスカートなどユニークなデザインのアイテムが続出した。きわめてエキセントリックな発想ではあるけれど、日本でもこうした考え方は受け入れられ、スカートやワンピースしかはかないというファッション専門学校の男子生徒も、結構多く見られたものだった。